龍頭ヶ滝 2007 ムーンボウ撮影への道


今年の7月、ある雑誌で見たヨセミテ滝のムーンボウ(月光虹・月虹)。
普通のヨセミテ滝に虹がかかって見えた写真だが、良くみると空に星が写っている。
要するに月の光で撮った滝の写真にその月の光で虹がかかっていた。
僕はそれを見て唖然となった。
月の光で虹がかかる!そんなことがあるんだろうか!
そしてそれ以来僕はムーンボウの虜になったのである。
ムーンボウを撮ってみたい!




しかしよく考えてみると一点から出た光が雫に当たってプリズム現象で虹が発生するわけだから、光源は太陽じゃなくても構わないわけだ。光源が他を圧倒して1点だけの状態であれば月の光でも当然虹は見えるはず。

さて、滝へ行ってMoonbowを撮るためには条件がいろいろ必要だろうが、整理してみた。
 1.普段でも虹がしっかり見える滝であること
 2.夜、真っ暗になる滝であること
 3.満月の夜であること

この三つ。

まず近くで虹が見れる滝と考えた時に思い浮かんだのが天滝・逆水の滝・竜頭ヶ滝・岩井滝・深山の滝。
ただしどの滝もちゃんと(空が見えるアングルで)虹を見た事は無い。
深山の滝以外は近くに街灯も街も無く山の奥なので月光だけの灯りで撮影できるはず。
但し天滝は徒歩40分もかかる上に氷ノ山は熊がでる可能性があり、夜はとくに恐いという難点がある。
逆水の滝も同様だ。岩井滝・深山の滝は虹が写るだけの水飛沫がどれだけ上がっているかあまり自信が無い。

というわけで自分の好きな竜頭ヶ滝でムーンボウのチャレンジをすることに決めた。
ここなら徒歩10分たらずで到着でき熊もたぶん出てこないだろう。
ただし谷が深いので本当に滝にちゃんと光が入ってくるかどうかが心配。

とりあえず現地調査から始めよう。




8月25日

翌日の26日は14夜。
まずは空が写るアングルで普通の虹がちゃんと写るかどうかを確かめに現地に行った。
この滝は東向きなので早朝4時出発。片道3時間。7時には現地に行っておく必要があるだろう。

現地に到着してみると大木が陰になって光が滝に差し込まない状況
時間を追うごとに木々の間から時々滝に陽が差し込むようになり、そこに虹を見ることが出来た。

そこから滝正面に移り定点観測を実施。
見事に虹が現れた。
時間を追うごとに下がってくる

主虹の後にこんどは副虹が現れ2重の虹が見えた。この光景も珍しい。
ただ木が邪魔をして滝全体にはなかなか陽が差さない。
この日滝全体に陽が差した時には既に主虹は消え副虹だけが残っている状態。夏で太陽が高すぎたようだ。
もう少し太陽が低ければ滝全体に陽が差した時に主虹と副虹両方を見ることがきっと出来るだろう。


家に帰ってこの日の時間と太陽の高度・方位との関係を確かめる。
月の方位と高度が同じ条件に入る時でないとムーンボウを写すことは難しいのだ。
虹は太陽を背にした状態で主虹が42度、副虹が50度の角度で見ることが出来る。
月光では副虹はほぼ絶望的だろうから、水平位置から滝を撮影する場合は月の高度は42度以下じゃないと見れる可能性はない。
方位は高度との絡みもあるから難しいが、木の影が滝身に当たるのでは問題だからこれを回避できる方位であることが一番のキーポイントだ。
一方月は満月であることが必要だろうから月齢は13.5〜15.5じゃないと無理だろう。

その結果月虹が撮影できる可能性がある日は翌日の8/26・27および9/25・26の4日間と決定。
8月の満月は月の高度が低すぎる可能性が高いが、撮影角度によってはムーンボウが写るかもしれない。
また10月の満月は、この滝でムーンボウが見れる可能性は無いようだ。来年までオアズケということになる。
結局8月と9月が勝負。
晴れることを祈るのみ。





8月26日・27日、 「天気予報:曇り、松江地方の星空指数10%」

結局撮影断念。
9月に望みをかけることにする。





9月25日、 「天気予報:晴れ、星空指数80%」

決行!

3時間の道程を車を走らせる。
着は6時30分。もう薄暗くなってきた。
しかし現地に着くと空に霞がかかっていて月の光が拡散している。
背景の空にも星が出ていない
一応何枚か撮ってはみたが、空が白くなるまで露光してもこんな状態・・・

 
8時になっても全く状況が変わらないのであきらめて帰途に着いた。
懐中電灯で足元を照らしながら遊歩道を歩くというのはそれだけでも結構心もとない。
さらに気分的にも落ち込み、足取りも重くなった。

ところが車で30分ほど家に向けて走ったところで、車のフロントガラスから星空が見え始めた。
あわてて滝に引き返す。

21:05、なんとか撮影ポイントまで戻ると、滝の上部だけではあるが、ちゃんと月光が差し込んでいる。
付けていた単焦点レンズでとりあえず30秒、
「おお!ちゃんと写るじゃないか!」


ここから広角レンズに付け替えて撮影開始
そして30分ほど月光滝の撮影をしたが、肝心の水飛沫のところまで光が差し込まず影がどんどん大きくなっていく。
先月の朝、邪魔になった東側の木とは反対の西側の木と山が月光の邪魔をしているのだ。
光が入る時間が遅すぎたのか・・・
やっぱりこの滝でムーンボウは無理なのか・・・・

しかしこの日は初めての月光滝の撮影。
虹無しではあるが、それでも月光滝のみの撮影成功に満足して再度帰途に着いた。
まぁそれなりの写真が撮れた。






9月26日、 「天気予報:晴れ・星空指数80%」

決行!
とにかく今年最後のチャンス、悔いを残さないようにと2日連続で出発。
現地到着は18:00、空に一点の曇りも無い。期待が膨らむ。
カメラをセットし、暗がりで夕食のパンを食べ、ひたすら暗くなるのを待つ。


19:00前、ちょっと早すぎるが撮影開始、今回は長丁場のつもり。
来年のためにも3時間はシャッターを切り続けよう。
時間を追うごとに少しずつではあるが滝に月光が差してくる。
この日の月光はとても明るい。さすがに正味月齢15.0の満月だ。


20:00前 滝のほぼ左半分に月光が入るようになった。
滝身の右側はまだ木の影が映る。
月の高度からするとそろそろムーンボウが見えはじめてもよい時間のはずだが残念ながら見えない。


20:20前後 滝のほぼ8割に月光が入るようになった。
ムーンボウは見えない。やっぱり無理なのか・・・・

そう思ってたところで、ボヤッと浮かんだ弓なりの白い影が見えた!
「もしやこれが・・・・」
立つ位置をいろいろ変えて見てみる。
自分が動くのと同じようにその影も動いた。
ヤッターーーー!!!」思わずガッツポーズ。全身鳥肌が立つような感動。
白い滝身の中にうっすらと浮かび上がっているのは白い虹。
これがムーンボウに間違いない!!
噂どおり七色には見えないが、目を凝らすと上側にすこし赤みがかってみえる。
これこそ神秘の世界だ。

 
21:00前 ほぼ100%滝身に月光が差した
至福の時
ムーンボウは徐々に下にさがってくる。

肉眼ではこんな雰囲気(2分) 写真ではこんな感じ(12分)

 
21:00頃 滝の左側から木の影が迫ってきた。
なんと滝全体に月光が差すのは僅か10分間。
この様子だと一年を通して龍頭ヶ滝で月光虹滝がちゃんと見れるのはこの10分間だけという可能性が高い。
ほんとに自分は運がいいとしか言いようが無いかもしれない・・・


21:30頃 滝の左4割が木の影になる。
ムーンボウはついに滝壺に消えた。
もしや副虹が写りはしないかと、しばらくは撮影を継続。
しかし副虹はいくら待っても見えない。さすがに月の明るさで副虹は無理のようである。

結局今回ムーンボウが見えた時間はちょうど1時間だった。

1時間分の星の動き


21:30すぎ 撮影終了
カメラの液晶モニタでどういう風に写っているか確認してみる。
するとムーンボウは紛れも無く七色に写っていた。
人間の目は暗いと色がわかりにくいので白色に見えるわけだが、カメラに写っているものはまるで太陽の光で写る普通の虹のようだった。
もしもこの写真に星が写っていなければ、誰も普通の虹と見分けが着かないことだろう。


22:00前 感動に震えながら帰途に着いた。
これまでいろんな風景を見てきたが、自分の人生の中でここまで感動したことはなかったように思う。
日本でムーンボウを直に見れた人がいったいどれだけいることだろう・・・・


    
 

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