adidasFIVETEN ガイドテニーvsファイブテニー アプローチシューズ考
2020/1
私は滝巡りを趣味としているが、その際にどんな靴を履いているかというと、かなりの確率でアプローチシューズを履いている。
アプローチシューズってなんだ?と思われる方が多くいるかもしれないが、
基本的にはロッククライマーが岩場にアプローチする際に履く靴ということになる。
ロッククライミングに使用する靴ではなく、そこに行くまでの靴。だからアプローチシューズといわれる。
機能的に簡単に言うと、登山が出来てかつ簡単なクライミングが出来る靴ということになる。
そしてアプローチシューズといってもたくさんのメーカーがあって、メーカーによって登山寄りのものクライミング寄りものががあるのだが、私がFIVETENのアプローチシューズを選ぶのは、そのアウトソールの「ステルス」という特殊なラバーが圧倒的に濡れた岩場で滑りにくいという評判だからだ。
滝へのアプローチはいろいろな場面に遭遇する。普通の登山から沢歩き、ぬかるみからヤブコギ、そして岩場の渡渉
しかしその中で一番危険なのが岩場だ。
砂地の斜面で転倒しても大怪我にはつながりにくい。一方で濡れた岩場をジャンプするなんてことはしょっちゅうだけど、もし岩場で転倒すると命の危険が大きくなる。下手をすると滝壺へ真っ逆さまだ。
そんなとき転倒して、やっぱりステルスにしておけばよかったなんて後から思ってもいけないし、(もちろんステルスラバーでも濡れた岩場は万全というわけではないけれど)
もしステルスラバーの靴を履いていて転倒しても、その時は自分の力量が足らなかったという諦めが付く。
NHKのグレートトラバース3という番組で田中陽希君が岩場で足を滑らせて結果的に手の指を骨折したことを知っている人は多いと思うが、ひょっとしてステルスラバーのシューズを履いていたら事故は起こらなかったかもしれないのだ。
ただし、このFIVETENのアプローチシューズにも弱点がある。そのあたりも含めて説明してみたい。
その前に、このFIVETENという会社
アメリカのクライミングシューズの会社でネーミングは「5.10」というロッククライミングのグレード名から来ている。意味合いとしては「脱初級者(一人前)のレベル」ということのようだ。
FIVETENはカリフォルニアテクニカルガレッジで開発された「ステルス」というラバーを採用したクライミングシューズの販売を始め、現在もクライミングシューズでは多くのシェアを持っている。そしてそのFIVETENが作り出したアプローチシューズが「ファイブテニー」「ガイドテニー」「キャンプフォー」などである。
いずれもステルスラバーを採用していて岩場のグリップには絶大のものがある。
イメージとしたら
F1のスリックタイヤのように柔らかくて食いつきの良いラバーだと思ったらよい。
ところがこの会社、数年前にアディダスに身売りしてしまい、キャンプフォー・ガイドテニー等の靴は一旦無くなってしまった。
その時のステルスラバーのアプローチシューズはアディダスブランドでの「テレックススコープ」一種だけだった。
そして2019年からは新しく「adidasFIVETEN」ブランドとして「ファイブテニー」「ガイドテニー」の2種が発売されることになり、それまで発売されていたアディダスのテレックススコープは現在廃版となっている。
というわけで、2020年1月現在ではステルスラバーのアプローチシューズはこの「ファイブテニー」と「ガイドテニー」の2種しか選択肢が無くなっている。
これまで私が購入したことがある靴は
・FIVETEN「ガイドテニー」「キャンプフォー」
・Adidas「テレックススコープGTX」
・adidasFIVETEN「ファイブテニー」
の計4種なのだが、このうちの「ガイドテニー」については、現在のadidasFIVETENブランドのものと昔のFIVETENブランドのものと大差がないということなので、現行のファイブテニーvsガイドテニーということで比較してみたい
まずはアプローチシューズの特製
滝へ行く際には土・小石・岩場・ぬかるみ・濡れた岩場・濡れた苔・濡れた木・川の中
などが想定される。これに対して各種靴の相性はどうなのか、私個人の感覚を記載すると
|
登山靴 |
トレッキング
シューズ |
アプローチ
シューズ |
スパイク
シューズ |
フェルト
シューズ |
ミッドソールの硬さ |
硬 |
中 |
中 |
硬 |
中 |
アウトソールの凸凹 |
大 |
大 |
小 |
特大 |
無し |
長距離歩行 |
◎ |
○ |
○ |
△ |
○ |
クライミング |
△ |
△ |
○ |
× |
△ |
耐久性 |
◎ |
○ |
△ |
△ |
× |
土・砂・小石 |
◎ |
◎ |
○ |
◎ |
△ |
ぬかるみ・草付き |
○ |
○ |
△ |
◎ |
△ |
岩場 |
○ |
○ |
◎ |
△ |
△ |
濡れた岩場 |
△ |
△ |
○ |
△ |
◎ |
濡れた苔 |
× |
× |
△ |
○ |
○ |
濡れた木 |
× |
× |
△ |
○ |
○ |
川の中 |
× |
× |
△ |
○ |
○ |
普段使い・運転 |
× |
△ |
○ |
× |
× |
アスファルト |
△ |
○ |
○ |
× |
△ |
という印象。
アプローチシューズは一般のトレッキングシューズと比較すると、岩場に強くてぬかるみに弱いという傾向にある。
また、ラバーが柔らかい関係で耐久性が劣ること、足首が曲がるようにローカットシューズなので、逆に捻りやすいという欠点もある。
一方で濡れた岩場や苔が付いた岩場についてはフェルトの靴には及ばないものの、トレッキングシューズよりはずっと安心感が高い。
(フェルトは乾いた状態で使用するととても滑りやすいので注意)
そしてアプローチシューズである「ガイドテニーvsファイブテニー」を比較する
|
ガイドテニー |
ファイブテニー |
外観 |
|
|
外観特徴 |
先端近くまで紐が締められる |
ベロがソックス形状になっている |
ソールパターン |
|
|
ミッドソールの硬さ |
やや硬め |
中 |
アウトソールの凸凹高さ |
小 |
小 |
アウトソールの材質 |
ステルスC4 |
ステルスS1 |
接地面積 |
特大 |
大 |
先端クライミングゾーン |
有り-大きめ |
有り-小さめ |
防水 |
無し |
無し |
濡れた岩の滑り難さ |
○(◎) |
○ |
濡れた土の滑り難さ |
△(×) |
△ |
簡易クライミング性能 |
○ |
○ |
ダイレクト感 |
○ |
◎ |
クッション性 |
△ |
△× |
履きやすさ |
○ |
△ |
普段履き(運転等) |
○ |
○ |
コメント
● ステルスC4とS1のスリップ性の差については実感としてはあまり感じない。(C4の耐久性を高めたのがS1という説明有り)
● いずれも靴をフローリングの上に置くとネチャッとしたような食いつきがある。
● ヌル苔に対してはどちらも滑ることがあるので注意が必要。ヌル苔に対してはフェルトソールやスパイクソールの方が強い。
● ガイドテニーの方が接地面積が大きいので、ガイドテニーの方がスラブには強いがぬかるみには弱いということになりそう。(実感としては感じられていない)。接地面積が大きい分、柔らかいラバーでもある程度の耐久性があるのだと思う。
● いくらステルスソールが柔らかいといっても、釣り用のフェルトソールと比べるとよほど耐久性がある。旧ガイドテニーで現在計500km程歩いていて、そろそろ寿命が近づいている。(1000kmまではもたないだろうと思う)
● ミッドソールの硬さはファイブテニーが昔のキャンプフォー(一般トレッキングシューズ)と同程度。ガイドテニーは登山靴寄りでやや硬い。
● ファイブテニーについてはシュータン(ベロ)がソックスのような形状になっていて、土踏まずから足の周りを締められるような感覚がある。
● ファイブテニーの方が素足感覚に近く、地面の状態が足の裏にダイレクトに伝わってくるのでクライミングに有利な一方で、ひねりやすいかもしれない。
● 逆にガイドテニーの方がミッドソールが硬い分ダイレクト感が少な目で、疲れにくい感じがする。
● クッション性を求めるのであれば厚手のソルボ等のインソール(中敷き)に交換した方が良いだろう。
● 先端のクライミングゾーンは親指と小指の部分(両サイド)の角以外ほぼ使用しないので、実質的に自分にとっては同等。
● ガイドテニーは先端まで絞めて使うと長距離では指が痛くなるので注意。
● いずれも普段の靴のサイズよりも1cm大き目のものを選んだほうが良いと思う。
● 自動車の運転や普段履きに使用するのはいずれも問題ないが、ガイドテニーの方がスムーズに履きやすいので有利。
大まかな印象としては、ファイブテニーの方がガイドテニーよりもよりクライミングに向けではないかという気がした。
さて、滝に行くにはどちらが向いているか・・・
両者甲乙つけがたいが、今の靴が使えなくなったら次も多分ガイドテニーを選ぶような気がしている。